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平成16年08月号 | |
上石隆明 |
桃の花少し早く咲きたるも心配事は纏いてやらん 逢瀬川切なく流れ風を恋うアンパンひとつ食みたる時間 「このままで」と囁くごとく我を呼ぶ包み込みたり暁の夢 咳払いするがごとくに泣きたるは雨を待ちたる牛蛙おり 少しだけ落ち葉になった気分です撫でていきたし春の川面を 吾もまた旅人となり新宿のスクランブルに乾きし頭は |
水野碧祥 |
ごろりんと青き空見る美術館綺麗に刈らるみどりの芝生 乙女の像並木の脇に飾られる<香を聞く>と名づけられおり 信夫山の麓に建ちし美術館<岡麓>の名想い出しおり <白文鳥>目虚ろに覇気のなく智恵子病の年に彫られる 智恵子描く紙絵の<ざくろ>観るわれに姫百合の壕思いおこせり |
板谷喜和子 |
口内炎治れば風邪のくり返しまぶしきばかり葉ざくらひかる 子の写真一葉もなきアルバムをひねもす夫は整理はじめる 緋の牡丹はらりと襦袢ぬぐように一樹の下に重なりあいぬ 赤坂を歩いておれば道問わる東北訛まじりて返す 哀しみはふいにくるもの居酒屋に亡き友好きな舟歌ながる |
進行形 安倍三惠 |
ジグザグばかりの私 あなたは愚痴も言わずに生きているのに 今君を罵ってやる唇ひとつ奪わない君のその口って奴 車の中ほんの短く握手して目を伏せてしまう月は明るい まっすぐな運針みたいな恋愛は進まない 完成は未だ・・・・ |
熊坂光一 |
家族なく一人残れり障害者みまもる人なく遠き施設に 年金の制度作りし議員らは法を守らず未納なりけり ピアノやめ三十年たちたり弾きし「知床」手は石のごと |