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平成16年09月号
上石隆明 もう少し蒲団を干そう晴れた日の初夏のエキスを吸い取るために
吾妻山望めばいつも青空が包んでくれたあの日の逡巡
草いきれ夏の扉も開かれて影法師吾を迎えてくれた
放課後の風が吾を刺すごとく陽炎と共にかえる思い出
白パンツ穿かずにねむる爽快さ男に生まれし事をうれしむ
むらむらと裸踊りに興ずれば覆い隠せぬ薄闇があり
水野碧祥 霊山の最高峰に立ちしわれ身体の毒は汗に流れる
杖捕りて最高峰に立ちおればしのぶの山がちいさく見ゆる
岩肌は直角に立つ霊山の右手に新緑深くひろがる
つばくらめわが自転車に巣をつくり黄色の嘴(ハシ)を大きく開ける
板谷喜和子 人訪う久しきゆえに安積山(アサカヤマ)先立つ白蝶われを誘う
実らざる蕾は木下闇に落つ未だ咲かぬ乙和の椿
極楽とうバケツことさらいとおしみ茂吉は川原のすかんぽ摘みにし
夏帯のききょう身に添う苅萱の中にかくれし吾をさがしぬ
天使の笑ひ
高橋俊彦
コップ酒あふれて友は語気強くわが恋歌に苦言を呈す
長梅雨の今日の晴れ間に家中の布団干したり子と二人して
教会の礼拝堂にサックスの楽のひびきてこの夜をほぐ
ガブリエルはたケルビムか祭壇の何方よりか笑う声あり
筍の伸び切りたるを手折らむに跳ね返りきて頬を打ちたり
余興に
安倍三惠
河の流れを遡りゆきその昔貴方と出会った水に逢いたい
ひまわりの躯を抱きしめる あなたもそんな強いひまわり
唇も顔も手も足も大好きな君の一部分、でもそして?
会いたいとしんみり思えず書類に向い仕事している私である