年度目次へ
平成16年目次
表紙へ戻る
平成16年11月号
上石隆明 食卓にひとつ残る茶碗ある息子の初のキャンプの夜に
夕暮れは身と心を悩ませるからぐしゅっとみんな壊してみたい
何となく生きてきたと話す人何度も煙草に火を付けていた
窓辺には照る照る坊主下げられてしみじみ雨を楽しんでおり
水野碧祥 ヒロシマにこころ残して身は跳ね人(ハネト)青い空なり葉月六日は
出陣の「神武東征」背景に記念写真を撮りつ跳ね人は
鈴いっぱいの箱を少女は首に下げVサインふたつわれ贈れり
名も知らぬ跳ねてる人と気が合いてラッセラッセとかけ声揃え
わが腰に金魚ねぶたを下げており背にも胸にも鈴は鳴りつつ
着付けにてきりり締まるわれのあり来年もねぶたに還る
安倍三惠 お盆には母と私が花を持ち石を清めて涼しいここち
パソコンをカチャカチャ打つ手汚れてるこころ休ませしんとする指
生きていくのは大変さ 大鎌の月のじかんの貴方のメール
夏草の最後のひかりを受けとめて帽子がひゅっと離れておちる
太陽に照らされて立つ青葉の樹 こころにしみる季節は過ぎて