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平成17年02月号
上石隆明 迫り来る夕焼けに染まる蒲公英を踏みつけているぼんやりとただ
いくばくの吐息もつきてひしひしと誰と語らう今の幕引き
抱き合いて永遠の為の抱擁に吾は飢えているからだも冷えて
庭先の石榴はじけて落ちし日に友の死知らす葉書届きぬ
割り切れる奇数が好きと吾子が言い算数ノートに丸が続かず
水野碧祥 地震ゆえに山古志村は沈みゆき闘牛・鯉は天を翔けゆく
廃墟後神戸でカレーつくったわれ朝餉の湯気は中越に立つ
中越に余震は止まぬ深度六わが原子力発電所に罅はなきやと
猪苗代の駅に降り立つわれのあり大きなる虹青空に冴え
初雪が磐梯山を染めており澄んだ空気に肌は冷えつつ
安倍三惠 香水の瓶のかたちは上海の貴婦人のようにうすく微笑む
桃色の小銭入れなりオレンジに変わりていつか私も変わる
机の上にビスケット置く君の手の確かさ知らず沈むこころは