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平成17年03月号 | |
上石隆明 |
庭先の冬の法師は寂しかり途切れ途切れて雪に消えたり ひたすらに高く舞うは破れ凧あなたの声に戸惑いもあり 夕闇に紛れて帰りし吾子の頬冷たきままに涙拭いて ポケットに飴玉ひとつ隠しいる鳩の目をした少女のごとく ひらひらと?み所の無き心雪解け待つは吾とて同じ |
伊豆 水野碧祥 |
課の旅行忘年会を兼ねており稲取温泉バスで行くなり 芦の湖の海賊船に乗りしおり湖(ウミ)見つめれば霧雨の降る みかん狩り段々畑を登り行くみかんくるりと九個食みたり 水鳥に平家公達散り散りと富士川の戦さわれは見ており |
深山の水 高橋俊彦 |
歳晩のわがさ庭辺に咲き出でし白梅いくつ日に照らひつつ 暖冬のゆゑにかあらむ山茶花のくれなゐの色鮮やかならず 旅行など叶はずなりぬ外つ国を駆け巡りしは遠き日のこと ワインをば旨し友は飲み干しぬわれは深山の水に潤ふ 好みゐしアナウンサーが報道去りしてよりわれテレビを離る |
安倍三惠 |
ざくざくと雪かきをする合間から真白い球が降り降ちてくる 父親の背中はぬくいのだろうか 一度も触れてみしことなし 鳥は籠すてて空を飛びたいぞ 留萌の春はすてきな処 |