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平成17年04月号 | |
上石隆明 |
枯れいそぐ向日葵の群れは俯きて秋立つ風に揺れておりぬ 中空に吸い込まれいくは吾の恋焦がれつつも影はとどめず レタスの葉契りちぎちて夏終わり埋もれる事なき過去もある 争うを嫌いてのぞく手鏡に疲れし顔も吾を見つむる 喜哀を背にのせて中年帰りたりやさしき街角見つけるために 乾燥機に回り続ける白きシャツ泣けぬ男の不器用をこめ 吐く息にかかる重さを確かめる携帯電話の点滅弱し |
白の印象 水野碧祥 |
エレベーターを降り去る我に石鹸の香りはゆるら伝わりており 無人なり駅舎に汽車をわれは待つ吹雪の音が闇夜に吼える 米沢からの列車は雪は凍りつくドアゆっくりと開くを見てる 汽車に乗るわれは体を冷えており列車の暖に頬はゆるみつ 雪掻きを休みて眺め吾妻山風の冷たさわが頬を叩く |
一陽来復 高橋俊彦 |
蕎麦を打つ力は萎えずあと二十日経てば六十八歳のわれ 晦日そば食みつつ明日を希ふなり子の結婚と母の長命 損失は身銭を切りて購ひしこの生業やああいくそたび 施設より母も還りてうからとの話の弾む歳晩の夜 癌を病むわが友にして名の高き山三十を踏破せしとぞ 貧しかる国びと達をどん底に叩き込みたる大津波はや 腐臭さえ漂ひてくもわが見やるテレビ画面は惨憺として |
安倍三惠 |
貴方の名貴方に向い呼べなくて後ろ姿がさみしいとても 眠る君起き上がる君それだけを微笑みながら見ている私 家のひと残らず眠る夜更だけ貴方の名前甘くのぼらす ひろはにほへとちりぬるを君が出るあさきゆめみし螺旋階段 |