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平成17年10月号
上石隆明 何ごとに縛られているか空虚感風鈴鳴らし飛ばしてみたし
ちぐはぐになりたる頭の片隅に少し疲れた夏の声がす
お帰りのメロディ流れる道に立つ少年のわれ中年の吾
ごめんねと誰に謝る事もなく夢の中の障子明るむ
プチトマトつかむ指先揺れている食わず嫌いに俯く吾子の
三社祭
水野碧祥
浅草寺手を合わせてるわれのあり見渡せば人間遙かに続く
目前の三社祭は激しくてわが魂は揺さぶられおり
三社祭仲見世に見るわれのあり御輿の魂は揺さぶられつつ
町御輿揺らさるるたび鳳凰が飛びさり行くとわれは思いつ
末吉のおみくじ引いて浅草寺枝に結んでわれは帰りぬ
超大陸のかけら
(グアム行)
齋藤芳生
肥満した女の尻のようであるこのピザを捨てることは文化か
祖父たちの黙す戦後に狂い咲く南島桜はかく赤かりき
描いた絵を見せれば描いた我ばかり見る祖父なりき煙草消しつつ
蒼い目の兵士と撃ち合いしことなどを語れども海も花も言わざりき
防空壕に湿る湿る空気よ我になお祖父の戦後の手ざわりはない
戦闘機きらめきながら飛んで行くこの海も守られているのか?
安倍三惠 日本酒を購う客にほほえんでレジ打つ我を私は嫌い
サングラスかけてる人の語尾強く汗をかきかき道を教える
つながらぬケータイ手にしてほとばしる私の思いが雨に消えて
デジカメに私の顔が入ってる河童みたいと笑わぬ貴女は
2Lのおおきさのむね壁のよう だから私はあなたが好きよ