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平成18年05月号
上石隆明 子を含む朝陽のにおい透明に春を迎える吾が雪国も
すれ違う心ゆっくりすり切れてとりとめも無き週が始まる
あと戻りできぬ時間に拒まれて鉛筆折れてすっぽりと冬
空っぽなリュックを背負い旅に出る春の息吹を感ずるために
噴きいずる血潮のごとき夕焼けは坂昇る子の影を引きずる
影よりも薄くなりたる子の心負の微熱あり春休み前
水野碧祥 麗らかな春の陽射しがいへに入り明るい音楽われを包みぬ
弦楽の響きわれは癒されて皆が元気な季節を思へり
わがいへの枝垂れ桜は天を突き三十年の季節は経にけり
湯上がりに髪を梳きいたるみつめ浴衣のかをり感じてをりぬ
高橋俊彦 泳ぎつつ我が身の軽さしかと知るシオンを指して流るる河に
歌成らぬわれの非才を嘆きつつ空を見上ぐればヘリ唸り行く
稲刈りの機械操る青年の面輪明るしこの広き田に
乾し藁を穫らむためなり広き田に兵士のごとく並ぶ稲束
雀らはさむさ知らぬわが庭の冬木に群れて羽繕ひすも