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平成18年07月号
上石隆明 湿りたる砂の上を渡りいく空気乱しぬ紋白蝶も
点数を付けるがごとく照り返す田んぼに鳴けり番の雉が
置き去りにしてきた心スパイラル湿りを帯びた夕日が沈む
カーネーション抱きて乗りし地下鉄に閉ざされしままの心たゆたう
桜花散りたる道を影踏みて帰りし吾子の爪先冷えて
紺青に流れ星は溢れだし蹲りておりぬひとりの時間

花見山
水野碧祥
花見山に静寂な時間は消え去りぬ渡利(ワタリ)近くにわれは生れたり
桃源郷に鶯の声を聞きながら頂目指すわれのありけり
花見山に眼休める帰りには土湯の里に身をも休めり
吾妻小富士の種蒔き兎吾は観る蔵王の山も白く映えたり
満開の花より人間は多くしてさくらの息吹きを聞きに来るらし
魔法瓶・弁当携え花愛でる静清なくさくら賑わう
裸婦像
高橋俊彦
公園の一角に建つ裸婦像の清純さにわがこころ洗はる
朝の日に白く輝く裸婦像を「美穂」と名づけてわれ悦に入る
われ「美穂」と名付けし裸像二分咲きの桜の下に両手を翳す
地震あり、津波の心配なしという放映にやや失望覚ゆ
雄猿のごとくに顔を赤らめてやうやく着きぬここ手荒ひに
NISSANの車少なし子の働く会社の製品なれば気になる