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平成19年07月号
上石隆明 苦かりし菜の花和えの小鉢あり忘れらられ無い初恋の味
初鳴きのウグイスの声切なくて軟らかき土踏みつけている
碧色の空より降りし鈴音に打ち砕かれし弱気な自分
ニ短調の吾の心は爆発し必死にタクト振り続けいる
青カビのような君の心根に怯えておりぬ昨日も今日も
桜花ゆっくりゆっくり翻り集めておりぬ阿武隈川は
斉藤芳生 やわらかにあなたと私は息をして春 そら豆のパスタ分け合う
テーブルの上の恋愛設計図よく冷やされた水をこぼして
精巧に君が組立て静かなるボトルシップに我を乗せるな
いま少し続け沈黙あなたからの電話に太き雨音響く
PROCKEYの黄色のような明るさで飛び越えて来よその燎(ニワタズミ)
スプリングコートを光らせ逢いに行く駅にみどりの電車来ている
水野碧祥 北極星(ポラリス)や北斗七星・カシオペア煌いており闇の知床
原生林で宙(ソラ)を見上げる我の眼(メ)に特等星の銀河は浮かぶ
回廊を潜り抜けたる吾が顔に連翹の黄は反射しており
原田甲斐居城のさくら美しき汽水見えたり阿武隈川口
吾妻峰(ネ)の雪の回廊やや薄く痩躯の兎哀れなるべし
管理人より全上の痩躯の躯は変換出来ないためこの表記とします。

百歳を目指して
高橋俊彦
生けるまま召されしエルク我も欺くあれかしと操る旧約聖書
わが街を迂回し道路の成りしかば商店街最も静かなる場所
幾度も恋をして破れつひにわれ古稀を迎へつ他人は笑はむ
それぞれが老い深みたる中にしてひとり艶なる女性ぞ君は
萌黄なる色に芽吹きてひもすがらとゆれかくゆれ 軒端の柳
未亡人ばかりの増ゆる世にありてひたすら目指す百歳の齢