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平成19年09月号 | |
上石隆明 |
透明な朝陽を浴びせて癒やせたき古き傷跡吾にも在りて 指先を吸われていたる錯覚に落ちるがごときつぶらな眸 くすぐったい話をしている君の目に あせばみていく吾の身体は あかつきの風に吹かれる初夏に傷を恐るるぎすぎすの吾 君の心壊さぬように包み込む吾の両の手湿っておりぬ 吾知らぬ小さな恋が始まりて息子の携帯真夜中に鳴く いくつもの扉を閉ざす子の心何を求めて窓際に立つ |
斉藤芳生 |
草むらに金色の鞠墜ち来れば瞠きおらんばったの子ども ランドセルに揺れてどうにものどかなる防犯ブザーと熊よけの鈴 何を偽装されてもきっとわからない 五感疲れてこの国に居る アスファルトを灼いている人をしばし見きふるさとの油臭き猛暑日 また痩せていたり「ニート」の隣人は白きシャツ雨に汚されながら 海にみず滴りおらん一塊の酷暑を握りラニーシャは来る |
水野碧祥 |
ふらふらの容態でわれ起きつつも「早く寝たら」と意識は語る 韓流のテレビドラマを母このみ字幕読みつつ笑う母なり 仏国のレスコー警部好きな母日本語字幕のシネマなりけり CSを好み見ており母とわれ物故の役者はテレビに生きる |
あかやしの花房 高橋俊彦 |
あかしやの花ぶさの白陰るとき明と暗との対比絶妙 句集より頂きしも数多あり今日わが思ひ四句にて足りる エアガンに雀殺めしことあるを今にして悔ゆけふは父の忌 干し草は佳き匂ひせりそを嗅ぐと黄てふ白てふ集まり来たる 早苗田は日々青み増し古稀われの身に活力をくるるがごとし |