年度目次へ 平成19年目次へ 表紙へ戻る |
|
平成19年12月号 | |
上石隆明 |
コンビニの監視カメラに写るのは骨が軋みし吾の骸か 秋桜が踏み荒らされた公園に涙のごとく氷雨は降れり 点滅す横断歩道を渡りきる過去の自分を消し去るために 作りかけガンプラ数多捨てられて美しい国は遠きことなり コンビニの袋の中に擦れている孤独な我とおにぎり二つ |
斉藤芳生 |
青鷺はすっくりと佇ち夏の田に落下してくる冷夏を睨む 鬼百合の朱の激しさよ黄揚羽のはたたく音も確かに聴きぬ 海を知らぬ少女でありし日の我よ金魚の墓をいくつもたてて 学校中の金魚に白点病流行りメチレンブルー色の大空 かけっこは嫌いだった校庭の砂に光れる雲母のかけら ザリガニの鋏が沈んでいた池よ埋め立てられて我に踏まるる 雪の降らぬ信達平野狭そうに首ゆらしつつ白鳥歩く |
食物連鎖 高橋俊彦 |
児らの数めつきり減りて祭り日といふに広場は老い人ばかり 仲間より取り残されし鴨一羽雨後の川面を上り下りす 台風の風雨をものともせぬ人の集まる処ここの茶房は 稗のみの稔れる田あり農びとの立てし計算したたかにして この森を冷たくぬらし降る雨にたちまち滅ぶ夏の蝉どち しむしむと蝉のむくろは食はれゐむ静かに進む食物連鎖 |