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平成20年03月号 | |
上石隆明 |
えるもの見えざるものを風揺らし秋のベンチに妻を待ちたり どれ程の冬を抱えているのだろう飼い犬ひっそり隅にまるまる ビル街に映える朝日の色違い日本の不安示すがごとし 新聞に載りたる雪も染みている汚れているは吾の心か 自らが汚して流るるはずは無き阿武隈川に白鳥が舞う 疲れたる心の逃げ場探すよう携帯電話の電源おとす 白煙を上げてくずるるマンションのその片隅に蕗の薹咲く |
斉藤芳生 |
「オハイオウ」がおはようになる瞬間を美き日本語の授業、二回目 くしゃみをしそうな顔で見ているカタカナで名を書かれればくすぐったいか この国にもある母子家庭父子家庭 少年が蹴る堅牢な壁 雨がふる、かもしれない冬を待っている少年たちの持ち歩く水 同僚はよく撓る鞭を持っていて隠さない私のようには ひたすらに見つめて過ごす海があるあなたに見てほしい海がある 数か国語の鳴き声を使わけながら餌をねだっているこの猫は |
オホーツク海 水野碧祥 |
グラビアのウトロの夕陽われ見初め夢に浮かぶオホーツク海 辞職すか?魂迷ひぬしれとこに夕陽眺めてわれは流離ふ 満たされぬ思ひを胸に抱きつつ夕陽映えゆくオホーツク海 わが魂は夕陽の朱に揺さぶられこころの癒し求めつつある わが夢はカムイワツカに泳ぐこと水着購うわれのありけり |
歳末風景 高橋俊彦 |
穂芒を掻き分け伸びる泡立草お前ぢやないと月が呟く 冬木々となりて軽かろ桜樹の枝しばらく鼾のごとき風の音 アメ横にシャッター降ろしし店なきを流石と見をり鄙人我は アメ横がシャッター通りとなれる時日本は潰れてゐると思ふよ 田舎者われ強心で一卓をぶんどりにけり新宿のカフエに |