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平成20年04月号
上石隆明 木枯らしに飛ばされぬよう抱きしめる夕陽の染まる君のこころを
空高く鰯雲も流れ行くやがて夕陽を食べるがために
病む日本皿に載りたる日の丸を銀のナイフで刺したし気分
空高く飛行機一機行く未明戦争知らず過ごす僕たち
歯ブラシの匂い微かに残る朝君の姿を追いかけている
夕暮れは煙草と珈琲混じり合い出奔せよと青春のわれ
斉藤芳生 「ビーチをもっと広くしようよ」湾岸は無邪気に埋め立てられて乾けり
よき風の吹く街なればよき旅をせよ私の飛ばす絵葉書
日本人家族歩めり砂埃の強く吹きつけている大通り
週末を飛ぶ飛行機の窓際に鷹匠と彼の鷹静なり
犠牲蔡のための羊が引かれゆき我のみが立ち止まる交差点
礼拝をわんわんと告げ朝な朝な寺院は鳩を驚かせいる
雲のなき街に暮らせば空疎なり夕影はいかに矜恃を保つ
雲のなき眠りを眠る私を駆け抜けてゆきし青馬君は
水野碧祥 この立春に大殺界を抜け出しぬ萌芽の季節迎へつつある
身も魂も変調きた数年はピアノ協奏われは好きなり
豆蒔いて悪縁すべて払ひけりわが身の軽さ感じつつある
凍てついたマイ自転車こぎしわれなりてふらふらふらと進みゆきなり
タイツ履きスカート巻きし女高生はにわの姿思ひ見るわれ
メンタルイルネス
高橋俊彦
淹れたてのHOT珈琲もろの手に包めば白昼夢の旅にあり
コーヒーは玉の液体さし向かひ貴女と飲めば夢も現実
サーズやら新型インフルエンザなど患者を脅す壁のポスター
世について行けない人ら今日も来て待合室にまなこ伏せをり
患者らと話せば大き笑ひありこれぞメンタルイルネスの謎
薬のみ決して渡さぬ病院のシステム変更にわれら苦しむ
熊ちゃんと我はメンタルイルネスの病友にして互ひに魅かる