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平成23年06月号 | |
陸奥 上石隆明 |
残酷な地震は地面を波立たせ我もみんなもただ空を見上げる あまりにも人は無力の存在でじっとするのみ動けぬままで 道沿いの大谷石なる塀はみなドミノのごとく倒れていきぬ スーパーの棚から物がなくなりて不安とともに長くレジ待つ ガソリンが灯油が無いパニックに枯渇するものに頼りし人類 海と山くだもの野菜と溢れたるわれらの土地をどうする原発 |
斉藤芳生 |
砕けたる皿、茶碗、鉢、全てすべて棄てきって母の声乾きおり 父の手の掻きいるあたまあきらかに白髪増えて余震に耐える 春風に空も仰げば人体に「ただちに影響のない」放射線 水槽が大地震にも壊れずに残りてめだかが春の仔を産む くずれたる土塀の上にある空を身体に深く深く吸い込む 葉桜となりてそよげる木々の下握る手を二度と離してはならぬ |
太平洋沖地震 壱 水野洋一 |
みちのくを脱出したい諸人はジプシーとなり黒人霊歌 原発の炉心の覆ひ吹き飛びぬ裂(キ)れ深かりし基地の峰々 東京の職業野球に情はなく踏み潰したり死者のたましひ 憬れず東京砂漠を過ぎ去りぬ原爆雲は都心をおほふ シャイロック君善人に見える日々かつて与党は国を売りたる 原発の恐れ伝はるみちのくにさくら散る散る春は来たらず |
東日本大震災 高橋俊彦 |
ライフライン止まりてガソリンも灯油もなしに毛布にくるまりわれ震えゐつ 震災など知らぬげに咲く蝋梅がわれの心を慰めくれぬ 壊れたる数多の調度片づけに倦みて馴寄りぬ黄の水仙に いい物を食うてをらぬに髭のみは一人前に生えてくるなり 幾たびも続く余震に古稀過ぎのわが肉叢はいたく痛みぬ 空ゆ降る放射線をば気にしつつわれ散策の歩みを急ぐ |
鴇 悦子 |
子のごとく我が顔舐めし三毛猫は地震(ナイ)に怯えて安否不明に 被爆国 原発事故も範垂れてシュミレーション通り進む地に生きる 便利さと引き替えに受けしこの事故は被爆国とは思えぬ重さ 水に土、空気頼めず怯ゆる日々原発神話被爆国にあり 大熊町で反原発歌いし佐藤祐禎氏、見舞電話に「だから〜」と言う 津波見て原発事故見て「農せずに済む」とう祐禎氏の胸内想う |