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平成24年01月号
上石隆明 点と点繋がるごとき同窓会笑みたる君の面影があり
沢山の鉢植えの花忘れられ暖かき部屋に枯れておりたり
空間に浮かんでいるよな眼をしおり秋の日ざしと母との距離に
雲間から躍り出たよな気持ちなり白髪目立ちし君と話せば
ポケットに握る冷たき五百円玉永遠に続く命のごとし
斉藤芳生
水野洋一 被災のちすべて失う日々つづく六十年はいづこにあらん
落ち込みぬ気力あらざるうつ的に定年退職延びてゐるなり
最北の宗谷岬にたちながら万歳してゐる無心なりける
遙かなる大熊よりもまだちかい露国となりぬサハリン思ふ
温泉は誘へど拒む母親の凝りたる肩を揉んでゐるなり
神の領域
高橋俊彦
原発は神の領域人間がたやすくその手を出せば火傷す
人々が次々逃れ空洞化するフクシマに黄菊白菊
眼を病みてやむにやまれず病院へ来つ院邸に揺れるコスモス
何となく百まで生きる心地して残余の銭を数へみるかな
美男とはいへないけれど心安し俳優西田敏行のゑみ
一本の値段が四十七円の胡瓜は端から端までを食ぶ
吐露
鴇 悦子
雨水の排水口の線量の振り切れる現9.99
ゼオライト撒きて線量下げんとし土かき取れば畑は平に
時経ても我が喉に刺す小骨、彼の時彼のふとした仕草
母として追試受けたき想い増す二十五の吾娘の生を偲べば
変えられぬ不器用な生、レンズのごと光集めてくすぶりており