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平成24年06月号
上石隆明 身を切って行動おこせぬ政治家は増税増税只叫ぶだけ
復興を復興をと叫ぶだけ何も変わらず時は過ぎたり
湯治場で放射線浴び治癒せんと癌に刃向かい圧雪死せし人
見えざれど父の気配を感じたり真夜にランプを消すその一瞬
わたくしとあなたの胸が爆ぜている踏切おりぬあの日あの時
斉藤芳生 まろき香を子はもち帰る沈丁花の咲く公園に一日遊び
ワカケホンセイインコの羽のきみどりが桜を我にこぼし続ける
春なれば青きインクもやわらかく君の名前を書く白き紙
ハローワークの椅子に座りて窓に来し夕光を背中に丸めて浴びぬ
千の小鳥つぶらかに黒き目をみはり春をかぞえていたり故郷に
千の小鳥の一羽をひたに母は描く絵の具のにおい濃くなる春は
明日芽吹く枝の向こうにある空は青し小鳥も翼をひらく
思うさまに新芽をほどく樹とならん 千の小鳥をつぴいと鳴かせ
水野洋一
早春の賦
高橋俊彦
毎日のわが散策の所為なりや膝の痛みが嘘のごと消ゆ
奥つ城に花を手向けて報告す震災の傷いまだ癒えずと
ノーマルのタイヤに交換する時期の来てわが庭に梅の花咲く
老いたるを皆にさらしつつ集ひくる友ら思へば涙むましも
昔日の面影はみな脱ぎ捨てて集へる友ならばおもしろ
そんなにも貧しきわれか物を買ふに常に一番安きを選ぶ
鴇 悦子 避難者と指差す人あり賠償金ゆえに絆の切れる県内差別
自主避難せし娘問い来る証明書妊婦に賠償金の追加のあれば
薄氷の弥生の空裂く飛行機雲原発事故の爪痕のごと
喜多方の深紅の秋を友呼びて歩いた二日は事故前のこと
六十路の息子母の写真を撮りに来と笑いし老婆遺影と知りて
凍み土の緩みてねばねば靴につく朝の歌壇に芍薬の紅芽