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平成24年10月号
上石隆明 店先のワゴン山積みセール品あまたの映画の煩悩溢れる
日暮里を過ぎて夕陽が迎えたる旅への不安と期待をのせて
ノスタルジー誘う夕焼けまん中に吾も溶け込む憂鬱を絡め
狭庭にはしだれ桜の若木あり来年こそはと母の呟き
机上には残されしままの老眼鏡彼の世の父には何が見えしか
はしゃぐ声奏でるように戻りたる踊りやぐらが茜に染まる
斉藤芳生 祖父の記憶は両の腕にあり月の照る猪苗代湖を泳ぐ
職を求める人俯かせ雨長し梔子は香りながら萎える
豊かなる白桃あわれ私の爪触れてより腐り始めつ
阿武隈川のライブカメラよじんじんと熱を帯び油蝉がぶつかる
「地下足袋を履がねっかだめだ」私の歩みを祖父は見ているだろう
水野洋一 さやさやと稲穂揺れざる福島に喜多方の町稲穂揺れつつ
歩めども歩みも虚し歩きたるみどりの風を頬に受けつつ
さわやかな風の吹きたるふくしまの欅の森に蝉の音聞こゆ
煌々とテレビつけたる真夜深く誰が見るかやオリンピックを
苦しみを何も語らぬ学生のパワーあふるるわらじソーラン
高橋俊彦
鴇 悦子 明日オペの説明責任聞く我は俎上の人になりきれずいる
高台に居りて眺める我に今宵、花火の音し生活(クラシ)の匂いす
地震豪雨雨天地の怒り治まらずノアの方舟思う去年今年
ソーラーの線量計は遊ぶなと高さデジタルで刻々と知らす
吾が丈を超して向日葵咲き初めぬ除染のため花摘む予定の
テリトリー侵し戸口にいる猫にダッシュして追う老猫の三毛