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平成25年01月号
上石隆明 夢の中必死に逃げる吾がいて追っ手来るのは僕かも知れぬ
捨てられず炬燵に置きたるジャムパンに奇麗な黴が咲きたるひと日
空白を埋める一文字零なのを悲しんでいる暮れる秋の日
その先事は何も知りません向日葵一面咲いたいわき市
文語口語すり合わされずいる今や原発事故の起こる前なり
意思を持つ原発未来に在るやらん人間の弱さを隠す為にと
信じれぬ星占いを見ぬために母は消したりめざましテレビを
斉藤芳生 ハクビシン真夜中に群れ溶けてゆく日本の首都をふんふんと嗅ぐ
死ぬのみの大蟷螂の秋である太き腹より卵を産みて
集落に若者おらず我もおらず祖父の植えたる杉は朽ちゆく
杉の木は朽ちながら空を見ておらん祖父たちの見上げし空の青
水野洋一
高橋俊彦 
鴇 悦子 放棄地は斑に見えて秋の田に農家の苦悩の見えし福島
福島は復興せねど報道で危険に怯ゆる他県の原発
季ずれてきつく刈り込みし月桂樹の枯れずに新芽伸び来る強さ
東北道の泡立ち草の植えられしごと咲き続く分離帯流る
頭足に力を込めて翻る今日は女孫の寝返り記念日
石蕗の蕾より立ち幸せをまき散らすごと黄蝶舞いゆく