年度目次へ
平成25年目次へ
表紙へ戻る
平成25年07月号
上石隆明 パラパラと時雨れる夕に桜散り放置されたき我浮遊す
さやさやと竹藪揺れて君はまた黙りこくりて優しさ見せる
それぞれの高度に衛星従えて地球はまあるき水の惑星
叩き打つゴキブリの脚ピクピクと二度動きしは何故か悲しい
長針が素早く回る月曜日吾子の弁当作れる厨は
画面には松井と長嶋並びおり安けくはなし師弟というもの
今日立夏触れてはならぬ子の闇を消す事出来ずに悩みし日あり
斉藤芳生
いそのかみ
水野洋一
いそのかみ古井戸ここに在りけるを知れるとは我とおおけやき
少しばかり急ぎ生きこし我なりや癌病みてより日の暮れ疾し
ししむらの裡に嵐が起きてゐてその余波ならむこの吃逆は
大好きな肉も食ひ得ず生きる事がつまらなくなり申し候
さよならも言はず散り行く桜花われも散りなむ病み果てしかば
我をかく苛むやまひを捕囚して行け大王のネブカドネザル
高橋俊彦
鴇 悦子 手術受け麻酔の目覚めて夫の言うこれだけも俺許してくれと
真裏にある肝癌手術七時間耐えし夫はなぜか詫びおり
我戻すあり処を探すこの春日夢に現に鬼太鼓(オンデコ)の舞
ビンビンと腹底にしむ撥捌に故郷に来て鼓童聞く時
撥捌き汗落つる姿見る我の心揺さぶる生き様のあり
郷で見る荒海渡り北前船、復元されし太き帆柱
足を出す傍らに数多の岩鏡延齢草咲き佐渡の春