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平成26年05月号
上石隆明 カラゴロと氷の落ちる真夜中の孤独苛みてカップ麺啜る
ああ母はどんな秘密を持ちたるか火葬のときに燃やせと手紙
浅利汁作りし我の切なさは愛犬看取りときと似ていて
肩に背にいつも背負は家族なり凧に似ており吹けばさ迷う
透明な百円傘の骨一本曲がり捨てらるる運命悲しも
斉藤芳生 きらきらネームというにあらねど塾に来る子どもの名前お菓子のような
思考力育成問題解く背中あわれ一問ごとくにくずるる
月面ゆ仰ぐ地球の眩しさを思いみよ塾に読む「地球光」
水野碧祥 手の震え止むこと知らぬ如月も支援求めぬ誰も信じぬ
「PSTD障害癒える再来年」と大学院の教授は語る
古里を捨てて続けたる半世紀金の卵は悪の手先に
除夜の鐘聞かぬ年越し穏やかに断捨離初めのテレビ不要に
巴里からの君の声聞き懐かしむエッフェル塔の夜の思いを
如月の雪
鴇 悦子
積もる雪初めて触れて声をあげる孫に紐付き手袋編みぬ
一晩に五十センチの雪を掃くポストまでの竹箒重し
君子蘭歯元に淡くオレンジの蕾を見せて春を告げいる
来る彼岸吾娘の墓にと曼珠沙華掘りて取り置く用意をせねば
思い出を消し去るには難しいラスクの生姜のツンとくる強さ
本訣W
中根次朗
ふら親の逝きて終はりぬ子がつとめのよすがもなきわれ世捨てびと
うたた寝ゆ衣擦れの音に目覚むれど人気もなくて座す吾独り
母が影偲びて母が蔭膳とたまに赤身の鮨ぞ供へむ
ちちははに会ふ瀬ふたたび得むかとて吾がいのち捨つ淵の波風