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平成26年10月号
上石隆明 地方では親戚縁者に石投げて必ず当たる建設従事者
震災にて持ち直したり建設業「幸」と「不幸」は隣合わせで
明日からの飯を心配せぬ今の行き交う香典一万軽し
被災者を一括りでは語れぬも働く楽しみ思い起こせと
復興の最終シナリオ見えぬまま三年が過ぎぬ変わりしは何
文知摺石
斉藤芳生
「ちゃんと除染していますから」お辞儀して拝観料のお釣りくれたり
シュレーンゲルアオガエル鳴く池の水濁りつつ我の顔を映せり
睡蓮の花はりはりとひらくかな青き蛇しんと池を上がり来
文知摺石磨くほかなき恋しさを棄てて忘れて日も翳りたり
除染済みの樹木に紐を巻く仕事あわれしろじろと出口へ続く
ツキノワグマ出没の報、Twitterにつぶやけば笑うごとき樹雨よ
水野碧祥 禄山館にかかりし虹を眺めみる蔦は絡まる時計台座に
文学館狭く暑かり熱気ある清見糺の声はバリトン
小高賢の農業コラムも楽しみに協同組合夢を広げる
河童橋に眺め見下ろす梓川涼気を受ける朝の静寂に
鴇 悦子 役者って変幻自在に誰にでもなる雲のごと私は一人
暑き真夜思考回路も捕らわれし我の如くに軋む冷蔵庫
二ミリほどの水たまりあれば生きられるボウフラ蚊になりて我刺す
汚染土の上の山砂押しのけてグラジオラス咲く淡きピンクして
天変なる真夏日多き七月に雹の振りおる阿武隈高地