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平成27年01月号
上石隆明 秋雨が瞳を濡らすこんな夜は立体模型の悲しみ創る
死を恐れ死を忘れいて今し母朝ぽっくりと死にたきと言う
確実に別れがくると思しも母たっぷりの白飯たいらぐ
ひたすらというは悲しも歯車の噛み合わぬ日来る延命は無し
わたくしの脳に太古の空があり悲しみ色の雨を降らせる
ポロポロと机上に落ちてレシートが丸みを帯びて吾に纏わる
水系
斉藤芳生
たちまちに霧晴れてゆく眩しさの水系は朝の指に滴る
掻き分けてゆく水系に秋深し肘にびっしりつくイノコヅチ
阿武隈川の泥生臭く足跡を深く残して汲み上げる水
水系をたどれば雨に濡れている福島がある柿の実朱く
非常勤の塾講師とう朗らかさ集えば給湯室に湯が沸く
かさかさのくちびるのまま眺めたりダム湖の景色どこも似ていて
その枝のあおくやさしきしたたりよひとは水系に傘差して生く
水野洋一 数多なる薔薇を贈りぬ君がため生誕祭に呑みぬシャンパン
宝飾のひかり輝く店内に数千万のダイヤ見てゐる
珈琲の出てくる前のしばらくに永久に忘れぬ君との誓ひ
珈琲のかをり漂ふ店内にチョコファッションを君と食むなり
瑞巌寺歩みつつある杉木立黒髪の香傍に聞きぬ
鴇 悦子