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平成27年06月号 | |
上石隆明 |
巡りたる記憶の中の砂時計幾たび返すも思いは満ちぬ 人の死は約束されし事なれど気づかぬ事にしには何なり 箸使い厳しく躾し祖父なりし我は駄目なる子に伝えぬを CDとLPの音聞き比べ温くみがありてLP勝ちとす 沈丁花今年も香る愛しさよ教えてくれし笑いてあなた むっつりと電信柱の連なりて地下に根を張る高圧ボルトの |
斉藤芳生 |
日本の月照り返す研いで研いでもう折れそうに薄きしろがね 春炬燵あたりまえにて和菓子など食べておりきな粉こぼさぬようぬ 鶯餅のきな粉すこうしこぼれたる卓の上淡く春が来ている 花見酒に少し酔いたり歌詠まぬ君に歌詠む話などして 花冷やす雨の明るさ窓すこし開けたまま書きものに倦むとき 春雷の遠ざかりゆく部屋の内触れるあなたの耳はつめたい |
水野碧祥 |
吾妻嶺の種蒔き兎飛び跳ねぬ信達平野は眼に映る 連翹の花に活き活き感じとり瑞龍寺の鐘胸に響きぬ 一木の先手観音に掌を合わせ色即是空ソメイヨシノは 学生と共に学びぬ薬理学十八歳のパワー受けとる |
鴇 悦子 |
宰相の見ざる聞かざる言いつのる改憲派兵秘密保護法 改憲を声高に言い派兵して七十年を更地にする 成人を十八歳まで引き下げて改憲するとう首相の本音 バーチャルと現の見わけつかぬ者増え来て人殺める少年 認知症なれば全てを忘れ去る生きる怖さを娘に悟られず |