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平成28年12月号平成29年01月号平成28年02月号
上石隆明 充電の終えしスマホの点滅の揺らぎはわれのこころを殺す
禍々しき不安にいつも苛まれ重きからだが鬱を呼ぶのか
墓の中の独りとなりし叔父がいぬ缶ピースの匂いかすかに
小説に支配されゆく吾のこころ深夜の湯船で胸を拭えば
五七五無味乾燥に詠みたれば外れ批評が我に襲い来る
子の気配消えたる部屋に匂いたる蚊取り線香まぼろしも良し
斉藤芳生 金魚一匹泳ぐのみにてしずかなり 秋は睡蓮の鉢の底より
子を叱る教室の隅にいつもある「幸福の木」が乾いてしまう
がんばりすぎて葉先茶色に枯れている幸福の木(ドラセナ)よ、頭を上げぬ少女よ
消しゴムかすをいじっていた子も聴いているごみ箱を漁る駱駝の話
少年は砂のようなるさびしさを椅子にのこして教室を出る
駱駝鳴くはるか東に我はいて雨降りやまぬ歩道を歩く
水野碧祥 炎上に傷ついているわが脳MRIを受けねばばらぬ
クレジット口座携帯解約にネット環境なしでも生きる
MRI検査に脳すっきるとパニック現象改善なるや
東証の一部と語るPCDブラック企業の黒田経済
ゼロ金利理解もできぬ黒田節下村治は墓場で怒る
来春に儒教学ばん聖堂で我は信じる日本の儒教
父親の遺した時計嵌めてみるナイスショットの空をみつめる
鴇 悦子 ふと思えば三月二日、亡き吾娘の祥月命日墓参りせん
マンボウも朝顔もみな弱きもの身を切りて疾く種を残せり
茶葉には貴ホトトギスの合うという華道の師が手直ししつつ言う
夜爪切る親の死に目に会えぬという会えないままに父母は逝きたり
ソリダコとアワダチ草の違いしを見分けられ我が花活ける