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平成28年11月号平成28年12月号平成29年01月号
上石隆明 窓際に坐りしおみな子何気なく開きし新書に好感を持つ
爪を切り髪を整え母います去りたる夏を惜しむ庭見つ
みれんなくやめられしことたばこなり数多の煙に声も彷徨う
笑うほどあの日ことを忘れゆくニュースの話題かからだ冷えゆく
振り返るときやさしき目であれと夢見がちなる青春をへて
斉藤芳生 悔やみてふとる葡萄の房重く垂れながらみちのくの樹はあり
こころ鎮めて血圧測りいる母の朝の背中に秋は来にけり
子どもとは嘘のつけないえのころぐさその母がいてもいなくても揺れ
秋の蚊に刺された脛をいつまでも掻いている子の痒そうな文字
スマートフォンの画面に吸われてゆきそうな中二男子の背を二度たたく
みちのくのさびしさは川を吹き上がるこの夕に誰を抱きしむるべき
秋の夜長に酌み交わす辛口の酒、いつも辛口のおんなともだち
神在月
水野碧祥
ようようと準備しているサンライズ宍道湖の朱われは求める
寝台特急に半日寝るを楽しみにふくしま離れる刻を楽しむ
名匠の算盤求め札もなく出雲大社に無沙汰している
宍道湖の夕陽にシジミ食べでいる神在月の空気感じて
代表辞め癒やし求める大社宍道湖われを導いている
稲佐も浜日本の始まり目にしたく神代に思いを膨らませている
鴇 悦子 星形のるこう草咲く壁づたいゴーヤとともに空に伸びゆく
亡き吾娘の遺品はなべて取り置きぬ、分度器、写真、ウォーターバック
梔子の花咲きほこり亡き吾娘も形見であれば剪定をする
亡き吾娘の部屋に今寝ていつの日も一緒にいる気ともに眠らん
抗うつ剤飲めば悪夢を見ると言う医師の言葉の正しさを知る