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平成29年02月号 | 平成29年03月号 | 平成29年04月号 |
上石隆明 |
庭先に転がる白き植木鉢まぼろしは見ゆ愛(は)しき胡蝶蘭 シクラメン俯き誰も居ない部屋絆はあるか思い届かず 何にでもなれると思った若き頃こころの糧なる小林秀雄 独り酒五臓六腑に沁みし夜辛き思い出散らし迷い子 蝗とは稲の害だと教わりて農薬蒔かれぬ田んぼで採りぬ キズをもつたまごがうかぶ大鍋の煮込まれおるは我やも知れず |
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斉藤芳生 |
厳冬の山肌はきょうおのずからひかりて鳥の飛翔をはじく 雪降らぬ冬のいんちきくささかなかさりこそりと朽葉がうごく わたしたちはもっと臆病 雀きて真冬の枯色に紛れたり お客様に苦言を呈することもある「塾は託児所ではありません」 十二歳の憤りかくしようもなく色ペンをばらばらと落としたり (おこらないで、お母さんにはいわないで)破られたテキストが花のよう この宵はあなたの肩に凭れたきあたまなり髪を濡らしたるまま 絹針のように雨降る寒の夜をあなたに逢いに行ったのだった |
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伊勢神宮(私感) 水野碧祥 |
早暁に案内受ける内宮に吐く息白く宇治橋わたる 荒祭宮・風日祈宮に詣でたり二礼二拍手黙して語る 神宮を思はば心乱されぬ逢ひに行くのみ他意は非ざる 素直なる伊勢茶舗の娘は恥ぢらひぬ「惚れているよと母親語る |
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鴇 悦子 |
亡き吾娘のベットに寝れば一緒にいるような気のする日々 真夜更けて暴走族が家の横走り抜けいくマフラー響かせ 吾娘残す自画像飾りその部屋で毎日安寧祈り床につく日々 朝顔の種取りすぎて来春はばらまく程にたまりにたまる のどに小骨つかえて舟ににり病院こわさに骨のど通る アナウンサーは原稿をめくるサラサラと音たてて告げておりぬ |