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平成29年03月号 | 平成29年04月号 | 平成29年05月号 |
上石隆明 |
障子戸を抜けて飴色温み光父が吸いいし煙草の名残 小雪ふりこころの穴も埋められず寺への坂をスリップしおり 空っぽのわれにひかりをさすごとく瑠璃の天窓蒼穹を見せ 冷蔵庫のその安穏の暗闇のアサリチロチロ何思うらん 夕暮れの喇叭の響く砂利道の籠のしずまる豆腐懐かし |
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斉藤芳生 |
雪のように思いバックを抱え来て私の前にどさりとおろす 「勉強をせよ、勉強は雪掻きと似ているようでまったく違う」 「東京のひとってあたまがいいんでしょう」過去問を解きながら問いてくる ふくしまにもいじめはあってこの塾が逃げ場所なのだ、この子の場合 二百円を我に乞いたる自称除染作業員にこの冬遇わず 雪解けは嬉しかりけり人間の足跡の上に猫の足跡 |
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水野碧祥 |
父の詠む短歌・俳句を文箱から友のようなる父をば思う 朝方はベットで陽ざし浴びている爽やか気分を感じつつある 初スマホ巧く使えぬい如月は検索のみを震える指で パスポートとりて海外今年こそ「暁の寺」再び行かん |
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鴇 悦子 |
亡き吾娘に薬渡さぬ悔いありぬ遺品はなべて取ってあれども 生かされて生きている命勝彦の言葉に毎日励まされおり アンカーとは総合司会者深夜便にてよく聞く言葉 アナウンサーの原稿めくるサラサラと音して夜のふけゆく スタンドが我が顔てらし影絵にように見つめる自分 |