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平成29年09月号平成29年10月号平成29年11月号
上石隆明 変わり行く福島であれと願うとき海 山 湖(うみ)瘡蓋はがす
誰の死かわれらを電車に閉じ込めて饒舌は遠く会話は波打つ
残務処理に無報酬は有り得ぬと上目づかいや職安署員の
夕立に太き煙突咳きぬまっさらな悲しみ抱きて眠れと
八月のベランダとても明るくて産着いっぱい干したる幸に
梅雨明けと干したる梅の強き香は十年先は見えねど暮らせと
斉藤芳生 黙々と国語辞書引く小六のあの子似ているなあ、胡瓜草
「季節感カード」の端をとんとんと揃えて「あさがお」を教える日
地方都市なれど都市なりご近所にツキノワグマが出ればおどろく
市域ケースにその身光ればさみしかろネプチューンオオカブト夏のどん底
昆虫ゼリーというものありて甥っ子のかぶとむし今宵メロンのにおい
日毎夜毎現状脱却を試みるかぶとむしあわれ仰向けに落つ
Hell no!(絶対やだ)と誰かが叫ぶ にっぽんの眠りの裏側の木下闇
水野碧祥
鴇 悦子 吾が庭にピンク色した曼珠沙華珍しき色して咲きほこりたり
葉月朝ほおずきのなり実を鳴らし遊びし昔思い出しおり
吾が孫は亡き吾娘共に喘息で苦しみおりぬ哀れなりけり
我が母は寡黙な人で我を二度叱りしのみにて天に召されぬ
明日ジムに行けると前夜予告する夫は朝食作る役目す