年度目次へ
平成29年目次へ
表紙へ戻る
平成29年08月号平成29年09月号平成29年10月号
上石隆明 この春も三つ成りたり青き梅願いこめて摘みて漬けたり
本当の怒りを言えぬ福島の震え始まる白虎隊より
福島に素足のような雨が降り何かが始まるわれらの棘も
両の掌を隠したままのあやまりは地位協定や原発もまた
ああ瀬古の嬉げな解説テレビより早稲田の選手先頭なれば
雲おもく広がる朝に鳴く烏健気でもあり疎ましくもあり
気分まで乾く心地す夏の朝タオル二枚を音たてて干す
斉藤芳生 いとけなきものはよろこぶ川風に煽られて柳絮舞う青き空
教室にみずがねいろの静けさの満ちみちて雨子らの来る前
鳩低く鳴く声と文字を書く子らと隔てる窓は銀に雨ふる
会意文字教えんとして書き出す有明の「明」、泣菫の「泣」
学校と家の隙間の塾に来て塾のソファーで眠ってしまう子
4+4=何度書いても∞(ムゲン)子どものたし算は無限大
たし算しながら眠ってしまう六歳をお父さん、叱らないでください
水野碧祥
鴇 悦子