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上石隆明 |
福島産新米今年も香り立つ何もなかったと思えるごとく 今年またへそを曲げたる胡瓜成るトゲトゲきつく我を殺めるも 家裏にドクダミ草は花白く射さぬ陽の中繁る侘しさ ベイビーと叫びし人も遥かなり太鼓腹見せロックンローラー トウカエデはらはら落ちる庭先に立ち止まる母はデイケアに生く |
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斉藤芳生 |
学習塾の灯りの下をもう暗い、くらいと子らの駆けてゆく秋 やればできる、きみはできる、という言葉六年生を今日は泣かせたり 菊人形の若武者も泣いているような雨なり唇に触るれば甘く 発熱の身に伸びてくる山霧ンい白き腕 菊の雨濡らしつつ みちのくは眩し 少年の走るとき思い出したるように時雨れて オオハクチョウにも気の早いのがいることの何か嬉しく冬支度する |
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水野碧祥 |
うらうらと照れる秋陽を身に受けて微睡んでいる十五時までは あずさ川すがすがしい水に掌を延べて唇に触れたる霧の中では 木製の机に飾る『液状化』小高の筆を黙しながめる 夕暮は哀しいものか夕暮は自殺未遂の親友いずこに |
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鴇 悦子 |