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上石隆明 |
ごーと揺れはやぶさ過ぎて行くホーム無音ぽつねん吾に残して ああ香る体が求める缶コーヒー温さにほっとほぐれる現場 ああ多分これは仕事に生かされぬ思いて受けし講義の記憶 スカスカとバンズが挟みしネット記事戦後のようだと母が呟く くっきりと浮かびし文字がなき歌集真ん中あたりに多き付箋の 体中音に溢れた生活を手放すことは大人になること |
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斉藤芳生 |
川のほとりに暮らして冬は少し澄む水に小石を投げたりもする 塀を越えて柊の花こぼれいる通学路あり昼はしずかに 夏季をを過ぎたる花ももう飛ばぬ蝶を隠して孤独なり 雪 枯菊を焚くこともせずある庭に雨降りて我の髪を濡らしぬ 咲継げる山茶花白しわたくしの庭の薄暗がりもあからむ 白椿落つ 憤り鎮めんと眼閉じいるわたくしの前 雪降らば水も眠らんみちのくの厚く切りたる鯉を煮ており |
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水野洋一 |
嫋(タオ)やかにしの笛を吹く十六夜音色にあわせ篝火ゆれる 磐梯の裾野のみどりいろどりて鯉は泳ぎぬ遠く近くに 安曇野の野辺に遊びし季節はるか穂高の水を脛にかけたり 碌山の鐘の音色は鎮もりぬ虹は立なりスプリンクラーの 緩やかな時間は流れぬ水車小屋吟遊詩人の声は聞こえる 山葵大王元気でありし小高賢ゼロ票名歌と笑顔を語る |
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鴇 悦子 |
勝手口ガチャリと風がドアを閉めそこは土用の秋の日盛り するすると昇れば絵筆を変えて咲く六尺花火夢を描きぬ 震動につられて歯ぐきカチカチと鳴っている夜花火見しバスに 早起きは老いた証しか残月の霜月終わり猫も起き来る 指枕して寝る猫に声かて師走の夜を眠らんとする 小四で「ここが痛いの」という娘幼き乳房の痛き膨らみ |