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上石隆明 看護士に生年月日をすらすらと答える母に驚き笑む日
三が日誰も並ばぬ神社には舞いて落ちたる五円が一枚
仮置き場進める国は声上げて不精確なるも未来を示せ
竜巻が起こらぬ事を祈りたりビルの挟間に立ちて刃を研ぐ
洗濯機ガタゴト唸りシーツ濯ぐむかしおんなの匂いは消せず
子になにかしてやれる事がなくなるも掌の皺目立ちし今は
斉藤芳生 学習性無力感 寒くない冬の母子を曖昧に微笑ます
塾講師(元教員・元銀行員・今も院生)深く頷く
雪降らぬ冬つまらなし風の子が滑り台登りまた降りてくる
子規のうた諳んじるこのおのこごにながく垂るべし藤の花ぶさ
冬帽子ふかくかむれば風の音聴こえざり小雪舞う橋の上
翼大きく大きくひろげ降りてくる白鳥に川の水は明るむ
冬麗、と君の隣につぶやけばみちのくを溢れゆく日の光
水野碧祥
鴇 悦子 ジンライム飲んでた青春、荻窪の君のようなる四畳半にて
四文字のオハハラ、セクハラ増えてきて老いゆく我の能は悩める
去年今年ジム通いして締めくくる師走暮れ方元気が一番
逃げまどう塵芥追う百均の箒の先と我の目線が
ブローチにせん花梨の輪切り干したれば飴色になる陽に照り映えて
亡くなりし向田邦子の声を聴く「言葉が怖い」不如帰咲く晩秋の庭