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平成28年03月号平成28年04月号平成28年05月号
上石隆明 原発の事故の犯人上げぬまま上げられぬままは不可思議なこと
本当の犯人見えずただ過ぎぬ拙き政府を笑っておれぬ
「原発が危ないからねすぐ逃げて」ニュースの先なる妻よりの電話
六十キロ原発よりの郡山他人ごととし生きる吾いる
原子炉はアメリカ製と伝え聞く真っ先支援かトモダチ作戦
最果ての国にあらねど侘しさ極まりていく除染済み看板
吊革を掴むおみなの皮膚の艶撫でたし思いでそっと目そらす
マスクして化粧をせずに隠すわざ流行っておりぬ咳も出ぬのに
斉藤芳生 五年前よりむしろ賑わう駅前のひとすり抜けて教室に来る
「震災の時のことでもいいですか」中二問う 作文に書かせてもよいか
「母さんが」と作文に書く幼さに赤線二本引くのも仕事
「だから学校は!」と私が怒る時「だから塾は!」と怒る教師あらん
「ぼくはまだ赤ちゃんだったけど」と話す六歳の地震、つなみ、ゲンパツ
六歳に話して聞かせたる父母の三月十一日を思えり
水野碧祥
鴇 悦子 雪のせて切絵のごとき樹々のあり如月暮れ方蒼天の下
軒下に氷柱の下がり如月に木爪一輪、狂い咲く見ゆ
金木犀薫隣家は空家でも車通れがライトのつけり
棘ありて心の喉に引っかかる想いの夢見る如月の夜
下さい言われてみれば丁寧な命令形なり旅先のバス
カチカチと命を削る音のして冬陽は座敷に射しこみており