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平成28年04月号 | 平成28年05月号 | 平成28年06月号 |
上石隆明 |
うず高く積まれし排土がくたびれて憂鬱が窓を饐えて入りくる かりん誌に名前載りたる幾年も歌会に出られぬ壮年悔やむ 雲間から差し込む光に照る丘へ出で行くごとくも新宿地下街 じゃりじゃりと剃りしわが顎が尾となりて伸びいく夕べ鬱はふつふつ 五年過ぐも鬱と躁とを繰り返し回答期限を持ちえぬ不安 黒髪とスカートと靡かせ追い越せり空飛ぶごとくに自転車むすめ しかすがにドクダミはびこる家裏の愛されぬ性を愛しむも抜く |
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斉藤芳生 |
「メルトダウン」と喩えられたる中東の爆音遠く春の雪降る モニタリングポストの隣に咲いてしあい今年も困っているね、紅梅 ぬれ縁に白菜並べて干してゆく 大地震を知る前のあかるさ 理想の娘、からあくまでも遠ざかる我をさびしむ母の絵筆は 君の瞳の底に流るる冬の川今宵は水の際の凍れる 遡る阿武隈川のその末に怒りのままに凍る沢あり 凍る沢りいんと静か大地震の後をとけてはまた凍り来し |
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水野碧祥 | ||
鴇 悦子 |
抜糸時チクッとすると言う医者の三針の痛み身構えており 娘の脳を拾い集めて嘆く母を見しとう夫の言葉に黙す 帝切で生れし長女は「帝切の子はかわいくない?」と我に問いおり 二人目を帝切で産む吾娘もまた五体満足であれかしと思う 雪にのせて切絵のごとき樹々のあり弥生暮れ方蒼天の下 |