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平成28年08月号平成28年09月号平成28年10月号
上石隆明 飼い犬も齢八十過ぎたれば散歩欲せず見上げぬ吾を
既視感があれば歌評でやられたり詠いたいのにこころは晴れぬ
老夫婦営む駅前とんかつ屋閉店ビラを風が笑えり
決断を迫られる我の前にある下の息子の年金手帳
巣がひとつ残れり林の夫婦雉元気無き吾威嚇す今日も
斉藤芳生 山頂を否、山頂にいる君をめがけて飛んでゆく鳥の影
年相応の分別をついに棄てられず姿正しき白鷺の前
わたくしは遠い 一羽の白鷺を佇たせてながき川の岸より
あんなふうに逢いにゆけたら 白鷺のつばさは濡れた草生を揺らす
(学校じゃあないから)塾は子を救う やめてもいい、という気安さに
母と子は礼儀正しく頬笑んでやめてゆく(塾はいくらでもある)
水野碧祥
鴇 悦子 ピララッと台本めくる音のしてアナウンサーが大地震告げる
暗記してアナウンスしてる思ったた紙めくる音して興ざめしおり
種蒔きしアスパラの芽は根を出して生きんとしおりスチロール箱で
飛んで来たひなげし芽吹き蕾つけ遠近にあり駐車場内
かすみ草直蒔きなれど初夏の狭庭に風に揺れおり
「先生」とう名前の猫はダッシュして時々居間から逃げ出してゆく