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平成28年09月号平成28年10月号平成28年11月号
上石隆明 「アベック」も死語となりたる真昼間の空のベンチにタヌキ一匹
言葉では表現出来ぬと愛の事アニメに学んだ君を悲しむ
どの位研げば丸く成るだろう四角四面のきみのこころは
愚痴幾つこぼせばあまくなるだろうカレーいっぱい煮込みて悲し
碧空にきのうの襤褸を棄てていくそんなに重い身体となりぬ
もの想いこころ重たき夕暮れや「かごめかごめ」と弱音を吐けり
梅雨空は糸電話にて繋がれり父とあの女を語りし夕べ
斉藤芳生 ダイアダリア沿道にぞくぞくと咲いて咲くほどにひとの消ゆる集落
鄙びたるおんなに笑う口に似て鬼百合ひらくまだ揺れている
猛暑日の暮れて大粒の雨降りぬこころ濡らしてこころをあふる
群れる鳩はいつも空腹人間の前に虹色の首を揺らして
線香花火小さく爆ぜるよろこびの後の暗みに我も眠らな
牡丹松葉柳散り菊 ほのほのと照らされて父も母も老いたり
窓ほそく開けて眠れる夏の夜半そっと来る祖母、いいえ蜻蛉
水野碧祥 教壇の下村治に威厳ありゼロ・サム理論を板書している
タブレット携帯いらぬ巡礼者明るい声のおもてなしあり
デイタルの機器使わない七日めも人間と語らう三番札所
ようようにたどり着くなり極楽寺冷え冷えの水唇に含んで
鴇 悦子