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平成28年10月号平成28年11月号平成28年12月号
上石隆明 水ごころに目覚めし体の枕元深眠を示すスマホのアプリ
ことあらば開き直っている母のだれにでも「ありがとう」は時に淋しい
シュレッダー等ミリの幅に吐き出しぬ捨て切れなかった夢や思い出
亡き父の思い出消していくためのリフォームをせり古きぶつだん
ぷつぷつと泡を吐きつつ蜆貝薄れていくか生きたる記憶
イギリスのEU離脱も他人ごと野良猫死におり庭の片隅
斉藤芳生 金の鮃三陸の海に生きのびていたるを三陸のひとはよろこぶ
烈しきは五頭のドルフィンスプラッシュ夏遠ざかる水族の家
(相対的貧困も今は忘るべし)ドルフィンスプラッシュに手を叩く
科挙の話ばどはじめれば十四歳の少し笑える
草の穂の間に隠るる蝶に似てもの言わぬ四十間際の恋は
怒らせたのはきっとわたくし秋草のなかの飛蝗がおとたてて飛ぶ
蟷螂は存外達者に飛ぶからに初秋の子らも我もおどろく
水野碧祥
鴇 悦子 くちなしの花咲き香り亡き吾娘の形見であればせん定をする
ドクダミの八重は珍し我が庭の遠近に咲く曇天の下
プルーンの実はたわわになり熟す日を心あてに待つ八月の畑
初物は東を向きてオホホとう習わしのありここ郡山
佐渡発つに乗りし船の名ときわ丸、鴇と掛けたか新造船よ