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平成29年04月号平成29年05月号平成29年06月号
積もる
上石隆明
積もたる雪につつまれ白菜のそのかたき身もて甘くなれると
もくもくと雲積む空は消え去るも我になにゆえ消えぬはかな事
隣家に今年も匂う沈丁花今年もあなたを思い出したり
見たくなきものは映さぬカメラ持つ3.11から始まりしもの
時という見えざる扉押すときや赤子初鳴きこれぞ命ぞ
二人子を育てし自信もゆらぎたり双手にくねる初孫抱けば
斉藤芳生 「十二時間爆習会」とう催しの机間歩めば「爆習」の熱
空調のファン回る音、紙めくる音に書く音、「爆習」静か
赤ペンに汚したる指そのままにつきもどしたり小論二本
寝るんじゃない。実はいっとうよく見えるこの教室のいっとう後ろ
自己採点結果一覧を広げたるテーブルは雪原の冷たさ
「どうせ僕はフクシマだから」そんなことを君に言わせる馬鹿はどいつだ
君たち一人ひとりのなかに中学生のわたくしがいる(春の雪だよ)
魚眼レンズにふくらむ空を飛んでゆく薄桃色の紙飛行機よ
水野碧祥
鴇 悦子 早起きは老いた証か残月の弥生半ば猫も起きくる
射してくる朝の光は浮遊する塵芥照らして乱舞を囃す
ガサッという深夜の音に不安来て十六夜に月に周作を読む
するすると昇れば絵筆を変えて咲く六尺花火夢を描きぬ
湯水足る国に生まれて水を買う生活(クラシ)に慣れし娘二人は