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平成29年06月号平成29年07月号平成29年08月号
上石隆明 時かけて消したき思いあることは幸せなのかも真空妙有
恥ずかしき過去をさらして許し合い笑い合いたり同窓会は
振り返るときはやさしき目であれと落ちたるものは命のしずく
この酸味寝ぼけしわれを刺していく暁の触れなば落ちん紅玉
吾のこころ石となりたる夕暮れの他人の顔して不安襲いき
白雲が我を追い越すゆっくりと遊ぶ公園除染は済みし
斉藤芳生 ハリネズミを飼いたい、という子どもあり針一本ももたぬこころに
ペットショップの、いいえ日本のすみっこにハリネズミ針をたてずにおりぬ
なるほど小さなたわしのような生きものだハリネズミひとのてのひらの上
ハリネズミの子ども目覚めて鼻うごく針うごく(防衛にぬかりなし)
大震災の後六年を川は流れ土手をあふるるばかり菜の花
まっすぐに立て、前を見ろと子らを叱る時たれの後世を生きいる我か
列島のぐるりを原子炉で囲みわたくしたちはしあわせだったー
水野碧祥 一条のひかり輝く八重垣(ヤエガキ)神社に素戔鳴尊の熱気伝わる
願い込め用紙浮かべる鏡池古里離るる縁を結ばん
傀儡の政府嫌悪の今むかし霊言道士を赦すことなく
押入に飾るメットはズムズムと出番まだかと安保闘争
鴇 悦子 ジム行けば必ず映す震災の半壊の家全壊の家
元旦は吾娘の墓参の習わしに夫と我とで花をたむける
原発後遊戯施設が増えたれど子どもらは外で遊びたあがらぬ
幼日にオオバコjの葉を引きちぎり葉脈数え吉凶占う
眠剤を飲みて一時朝を待つ深夜放送を聞きつつ床で