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平成29年11月号平成29年12月号平成30年01月号
上石隆明 この世には居ない人のごと壁の隙間を抜ける碧風
手の中でほどよく溶ける愛が欲し薄皮一枚剥がすごとくに
ひたすらに牛丼かっ込む夕まぐれ退職願いは唐突にくる
風落ちぬ儚き朝陽浴びながら乳母車押すこれは夢なる
恐るるは胸突き上ぐる不安なり地震の記憶の断ち切れぬ夜
ああ正午セブンイレブンに車なく天変地異が起こるる不安
薬罐には満たされぬものが沸騰し君は赤子の死語りはじめて
斉藤芳生
水野碧祥
鴇 悦子 寝る時刻日記に記して起きる時何時間寝たか記す習いあり
吾が母は喉を詰まらせ死に際に会えずにおりし悔いの残れり
亡き吾娘が拾いし猫は蚤虱つきしを夫と二人で洗ってやりぬ
我に二人水子地蔵のあるからに産まなかった故悔いの残れり
猫の湯は糖尿病によくきくと夫が連れて行く時のあり
吾が娘吾が孫共に喘息を患いており猫遠ざける